旨い米、10キロ15000円
京都御所の南に新築のフラットが出来る。京都のフラットを探していたらメールで広告が来た。価格を見ると75平米で9000万円だ。設備を見ると充実はしているが、それほど豪華というほどでもない。高すぎるなあと思う。
仮に150平米だと2億という事で、普通の人では多分住めない価格だろう。烏丸御池から徒歩7分とあるから、特別便利という事もなくまあ車がないと不便だ。
これならハイアットの連泊する方がずっと良い。1泊10万でも年に10泊もしないだろう。あと5年生きたとして50泊しても500万だ。買ったとしても固定資産税にも満たないだろう。
京都や軽井沢や熱海などリゾートや観光地のフラットは、大都市に普段は住んでいる人や外国人がセカンドハウスとして買うケースも多い。富裕層だから法人所有で節税や投資用のケースが多いので一般的な人が居住するような物件価格帯ではないケースが多いのだろう。2億を2%の金利で借りると年間金利は400万。5年で2000万。管理費などを入れると5年で保有コストが安くて3500万というところ。つまり5年後に23500万で売れてツーペイだ。実際には3億、4億で売るつもりで買う人が多いのだろう。10戸買って24億、売って35億、利食いが11億で46%、年間9.3%の不動産利回りとなる。
人気の土地は新規の供給がほとんど無いから、そういう価格で売れるのか。東京都心の3区、港、千代田、中央区なども同じだろう。麻布台ヒルズでは200億のフラットが即完したそうだから、投資用物件は青天井の値段がついている。
六本木ヒルズのレシデンス棟は150平米で7.2億の中古物件が出ていたから、まあそんな相場なんだろうなと思う。3%の利回りなら2200万、家賃なら月200万でもそんなには儲からない。
都市生活は、このように質と量が必ず貨幣に換算される価値観の世界である。時間と場所がそのまま金に換算される世界である。非常に変動が激しいので、価格には過度な流動性が付き纏っていると考えた方が良い。
一方で、田舎暮らしはあまり大金とは縁がない暮らしだ。そもそも田舎では土地は農業=米作りのための土地という使用の伝統が根っこにある。米は食料だから、自ずと価格に限界がある。その限界のある商品を作る土台としての土地と農民の生活から割り出した、商品としての米の再販売価格から逆算される土地代金にも限界がある。生活に密着するとそうなるのだろう。貨幣の無い世界、あるいは貨幣を使用しない生活、わかりやすく言うと静岡県の田舎では、外食もほとんどしないしカフェでコーヒーを飲む習慣がない。ネクタイをする仕事は、役所と銀行と農協と教師と不動産屋しかいない。
それでも徐々に都市化が進んで、三島の国道沿いにはスターバックスが出来て賑わっている。田舎はほぼ全員が車で移動するから酒は飲めない建前になっている。つまり酒でなくコーヒーなら合法だから、それで誰かと会うにはスタバが良いのだろう。駐車場が満車でなかなか回転しない。
熱海にも温泉があって、地元民は平日千円で入れる。夜7時以降なら地元民は400円だ。ボディーソープとシャンプーが置いてあって都会の銭湯より安いが100%天然温泉だ。同じ源泉を使用して、オシャレに都会向けに作った施設は4時間で5000円である。レジャー用に作り変えると単価が10倍だ。
だから田舎で普通に暮らすのは金がほとんどかからないので気楽だ。たくさん稼ぐ必要性がない。頑張って働く必要性も緊急性もないので、人格がのんびりするのだろう。
若い時にはそれが刺激がなくてつまらないと感じる人が多いから、大都会の大学に行って都市生活をしようとする人が多い。エリートの大半がそう思うし、そう実行する。でもやって見て10年も経つと幻滅して地元にリターンする人が増えてくる。勉強が出来たので都会の大学に行ってコンサルやってましたが、体を壊して実家に帰って地味な民宿やってますとか漁師をやってますという人もいる。結構明るくて楽しそうだ。
一方で金まみれの都市生活に疲れた人は、早めに引退して田舎でのんびり暮らしたいと思う人も多い。僕もその一人で、田舎の人間関係が煩わしいのを知っていたから田舎の飛地、リゾートで暮らし始めた。だから面倒な事が全くない。農業なんて面倒な事もしたくないし、温泉だけあれば極楽だ。そういう物件はバブル崩壊の余波で結構余っていたので、ダンピング価格で買えた。とてもラッキーである。都会の1割の坪単価で、原価割れである。
そこに地震とコロナが来た。にわかに田舎に都会の人がたくさん移住し始めた。老人だけでなく30代、40代の働き盛りの人までやって来た。テレワークしたり、新規にお店をやってみたり、不動産屋を始めてみたりと色々だ。映画を作る人までやって来た。『温泉シャーク』は熱海でロケをやっている。パリでも公開するらしい。
最近は、中国人もたくさんやってくる。不動産バブルが崩壊したので、中国の富裕層が日本で株式や不動産をどんどん買っている。だから値段が上がっている。日本は安全で平和で安いから人気があるのだ。小田原も箱根も熱海も中国人だらけ。うまいラーメン屋、蕎麦屋などマンダリンが飛び交っている。上海ー静岡は飛行機で2時間半だ。金だけあれば誰でも来れる。上海のGDPは10兆円だから金持ちも多いのだろう。そんな人が熱海のフラットを買っている。日本の物価を決めるのはそのうち中国人になるのかもしれない。