テスラ、24年の成長鈍化を見込む-決算は予想に届かず、株価下落

この分野の高PERはもう許されない。

注目のテスラの決算発表があったが、普通に下振れとなった。
来期の販売見通しも弱いし、マージンもクソミソに下がっており、熱心なファン以外は希望を持てるシナリオがなかった。

【テスラの株価チャート】
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EVについては、当初の先進性に加えて補助金・ガソリンに比べて走行距離当たり電力価格が安かったことによるアーリーアダプター需要によるダッシュが大きかった。
しかし、購入者についてはここにきてEVを買うかどうかというのに二の足を踏む傾向が見られており、なぜそのようになっているかをいくつかの点を交えながら確認したい。

理由の一つ目はメンテナンスコストの高さにある。
EVは従来ガソリン車と比べて搭載半導体数が多かったり、電気系統の複雑さがあるわけであるが、この複雑性のせいでガソリン車であれば部品とっかえの安いコストで済むメンテナンスが、EVだとちょっとした故障が広範囲に影響するため、修理範囲が広がりメンテナンスコストが高いというのが徐々の明らかになってきた。
そのために保険会社もEV向けの自動車保険については値上げをしたり受け入れ拒否などをしており、傾向としては明らかになってきている。

二つ目はメンテナンスコストからも影響を受けているが、中古売却によるバリュエーションの低さである。
メンテナンスコストが高い上に、どれぐらい中古車的に性能が保たれているかのを判断するのが難しいため、中古ではずれを引く確率が不透明であり、アカロフのレモン市場理論みたいになっている。
そこに加えて自動車会社各社が供給をアホみたいに拡大させているため、値下げでシェアを維持するのにいっぱいいっぱいで、新車の値下げが続いている。
そのため、中古リセール価格も下落しており、ここで買うのは得策ではないという見方が広がりつつある。

三つ目が欧州の態度変遷である。
これまで欧州が自国の産業活性化のためにEVを進展していたが、そこに中国が赤字覚悟みたいな価格で
そのため、ここにきて欧州各国政府は中国を利するような策を続けるわけにはいかないということで、EV促進策がフェードアウトしつつある。
EVは補助金なしではさすがにガソリンエンジンハイブリッド車と比べると割高なため、これは単純な購入コスト増加につながる。

4つ目が電池の進化の遅さである。
半導体などは進化速度が速いため、供給をバカスカ増やしても進化が早く、リプレースメント需要が高いために需要が常に高いわけであるが、同じようなテンションを考えていたらリチウム電池の進化速度はそれよりずっと遅いことがわかってきている。
そうなると、EVの製造コストのうち半分を占めると言われているわけで、製造コスト削減効果はどうやらそう簡単には実現できないのではないかと疑念を持たれるわけである。

これら4つを合わせた時に購入から見るとガソリンエンジンハイブリッド車と比べた時にEVの「購入費+ランニングコスト-中古売却価格」がトータルで高くつくのではないかという疑念を抱くようになった。
これまでは素晴らしい需要成長をしてきたわけだが、このような疑念がついてしまった時点でアーリーアダプター以上への浸透はすぐには拡大しなさそうな雰囲気となってしまい、構造的に需要成長は落ちざるを得なくなったわけである。

こうなると、これまでEVで夢見てきた銘柄の高PERは正当化することが難しくなる。
現在テスラのPERは80倍であり、かつ1年先予想PERも55倍である。
株価位置も3年移動平均線から大して低い位置にもいない。
こういったファンダメンタルズの悪さとPERの割高さを考慮すると、テスラ株を買うなんてのは現在投資の選択肢には入らないと考える。
テスラはまだましな方で、他のEV関連銘柄はもっとひどい事態になるだろうと思う。